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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第五十八想】
2004.08.01

 千葉県習志野市の谷津干潟は、今では国の鳥獣保護区特別区に指定されているが、かつてここにありとあらゆるゴミが捨てられ、生ゴミやヘドロが悪臭を放っていたことをご存知だろうか。1974年、一人の新聞配達の青年が谷津干潟に入った。古自転車、バケツ、廃材、洗剤の容器、猫の死骸の入ったダンボール。新聞配達が終わってから干潟に入る。拾う量より捨てられる方が多いから状況はなかなか変わらない。汚臭のゴミ溜めで何をやっているのかという世間の目も気になる。恥ずかしいから人が来ると拾うのをやめたりもした。そんな中で、何年も続けるうちに協力者も現れるようになり、汚臭の干潟に生き物が戻ってくるようになる。カニやゴカイが増えてきて、鳥や魚もやってくるようになる。

 

 この青年の名は森田三郎。少年の頃、谷津干潟で遊んだ。葦を渡る風の声、潮が引いたあとに残るゴカイの穴から聞こえてくるプチュという生きている干潟の音。カニやゴカイそして葦は汚れを浄化してくれている。森田さんはこう述べている。「土をきれいにしてくれるこいつらを見ているとうれしくってお礼を言いたくなる。だから続けられたんです。ゴミをどける。こいつらが増える。葦の芽も増える。よかった。またどける。また増える。よかったよかったって思う。思うからやる。単純明快なんです。」

 

 以前この欄で、大谷地区の住民を中心に発足した「なまず会」(板橋康雄代表)の事を書いたことがある。なまず会の皆さんは一昨年、昨年と町内の五行川でゴミ拾いを行い1㌧近いゴミを回収したが、今年は上流である氏家町内部分でゴミ拾いを行った。黒須病院南側から高根沢町に向かって4キロほど。ペットボトル、プラスチック、缶、ガスコンロやビデオデッキなどが次々と水中からあがった。板橋代表の言葉がいい。「ゴミを拾い、きれいな流れを見るのは気持ちいいこと。」

 

 そんな五行川で今年も7月4日、大谷公民館主催の「なまなまぬるぬるなまず祭り第3段」が開催された。盛り沢山のイベントのなかで「さかなのつかみどり」では忘れられない情景があった。スタートの号令とともに魚を追いかける歓声があがったが、終わってみると、魚で袋を一杯にしている人がいる一方で、1尾もつかめずに空の袋をぶらさげている親子の姿もあった。そんな時、魚を沢山捕まえた父子が、空の袋を手持ち無沙汰にぶら下げている親子連れに順番に声をかけて、それぞれの袋に3~4尾ずつ入れてやっているではないか。お父さんは40歳ぐらい。子供さんは小学4年生ぐらいだったろうか。傍らには乳飲み子を抱いたお母さんがいた気がする。声をかけられた親子は最初戸惑い気味にさかんに遠慮していたが、すぐにニコニコ顔になって、その場には思いやりの風がふき、幸せな気分になったのは私だけではないと思う。

 

 最後に「本当の自分」という本からどうしても紹介したい文章を。

 きのう運動会でマラソンに出ました。
 僕はふだんから練習をしていて自信があったので、「十番以内に入ったら、ごほうびにどこか連れて行って」とお父さんに頼んでいました。
 思い切り走りました。途中で三番でした。十番以内は確実だと思いました。
 途中の細い道のところに大きな石が転がっていました。
 僕はいったん通りすぎてから「危ないな、だれか転ぶな」と思いました。
 それで止まって引き返して、その石をどかしました。 その間にだいぶん追い抜かれて、がんばったけど十一位になりました。
 十番以内になれなかったけど、僕はすごくいい気持ちがしました。
 僕は、今も走っています。
                              「僕は走っています」より

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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