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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第百二十想】
2012.11.01

李下に冠を正さず

 広辞苑によれば、「李下に冠を正さず」とは李(スモモ)の木の下で冠の曲がっているのを直すと、李の実を盗むのかと疑われるということから、他人の嫌疑を受けやすい行為は避けるようにせよの意、とあります。たとえ李下で冠を直したとしても、李の実を盗んでなどいないのだから堂々としていればよいとの考え方もありますが、できるならば疑いは持たれないほうが良いのですから、どうしても李下で冠を直さなければならないような時には、李の実を盗んではいないと証明できるような手段を講じる必要があると思います。

 

 九月町議会で、町議会議員から我々が教訓としなければならない質問をいただきました。その内容は、町議会議員が教育長に面会を申し入れ、その面会時に、町の公共事業にかかわる業者を紹介したという事実があるがそれはいつ頃か?というものでした。

 町当局としてもこの問題について内部調査を行い、面会は事実であること、その時期は昨年の四月から五月の初旬であること(ただし、当初一昨年の十一月との誤認があり後日訂正いたしました)、その内容は名刺交換等の儀礼的なもので短時間であったこと、が確認できました。議会にも教育長から報告を申し上げ、たとえ名刺交換だけであっても軽率な行為であったとお詫び申し上げました。

 さらに議会運営委員会においても「特別職及び一般職の職員と議員との接触について、公務上の必要の有無にかかわらず『町民に疑惑を抱かせる恐れがある』」との指摘と改善要請がありました。つまり、議員との接触にあたり、その内容ではなく、接触したこと自体が疑惑を生じる問題であるとの指摘でありました。

 

 これまでの町当局の考え方として、議会議員からの面会要請に対しては議員が町民の代表であるとの認識から、これを断ることはせずにお会いすることを原則としてきました。今般の教育長の件も、その原則に則って対応したことでした。私自身もその原則に則ってこれまで議会議員に対応してきましたし、時には議会議員が紹介される方とお会いもしました。その中で、例えば紹介を受けた方が業者である場合には、あくまでも名刺交換等の儀礼の範囲を超えないことを心がけてきましたし、教育長もそのことをきちんと守ってくれました。すべての職員も同じです。しかし、今回の議会運営委員会からの指摘と改善要請は、これまでの原則を見直さなければならないものでした。

 疑惑を生じさせないため、どのようにこの原則を見直すべきか、という議論の中で、議会議員との一切の接触を禁止するということは、町にとってもマイナスですし議員活動にも差し障りが生じますから、これはできません。ではどうすれば「疑惑」を生じないようにできるのか?

 議論の結果、面談や資料提供の申し込みについては、議会事務局を通じて申し込んでいただくという結論になり、内規として職員に周知し、議会にも報告しました。このことによって、いつ、誰が、どのような内容で面談や資料の要求をしたかという事実が記録に残ります。きちんと記録に残れば、疑惑を生じさせないことに繋がります。議員の方々にとっては、これまでより一手間余計に掛かることになり、理解をいただけない方もいらっしゃいますが、現在、議会において議会倫理規定等の制定が議論されていることを踏まえ、敢えて、「当面の間」との条件を付けてこの内規を制定しました。

 

 一連の経過を振り返る時、この問題は、非常に大きな問題と捉えざるを得ないのです。なぜなら、震災で使えなくなった阿久津小学校の一刻も早い建設着手は、児童、保護者、教職員の切なる願いであり、その実現は、町と議会の責任でありました。しかし、議会運営委員会においては、議員との接触の中身ではなく接触自体を問題として、阿久津小学校建設契約議案の上程延期が議論されました。さらに、本会議においても、同様の理由で当該議案に対する反対討論があり残念ながら四名の議員が反対されました。幸いに、議案は可決されましたが、これがもし、上程の延期や、議会での否決となったとすれば、児童、保護者、教職員の皆様の切なる願いを踏みにじる結果になったのです。ですから、このようなことが二度と繰り返されないようにするために、議会議員には余計な手間かもしれませんが、面談や資料の請求には「議会事務局を通していただく」という内規を定めたのです。

 今回の問題の発端は、議会議員が公共工事にかかわる業者を教育長に紹介し、面談したことでした。我々は事の重大さを受け止め内部調査を行い、一定のルールを設け、議会にも報告させていただきましたが、議会内部では、どのような議論や調査が行われたのか私は不知です。出来得るならば、早い時期に先ほどの議会倫理規定等が制定され、議会の側からも職員と議員の明確な接触のルールが示され、「当面の間」として定めた今回の内規を撤回できるよう私自身も望んでいます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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