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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第百三想】
2011.03.01

TPPについて

 TPP(環太平洋連携協定)は、太平洋周辺の国々が参加して幅広い分野で関税・非関税措置の全面撤廃を目指す経済連携構想です。政府は今年十一月までの正式参加を目指して、国内対策を早急に詰めるという方向を示しました。報道等では、あたかも農業問題だけであるかのような印象を受けますが、そうではありません。医療・福祉や金融・投資、製造業やサービス業など様々な分野に劇的な変化をもたらすことは明白です。それだけに、突然にこの問題を打ち出し、性急に事を進めようとする政府の方針に危惧を抱いています。

 

 推進派の方々は、既に行われているFTA(自由貿易協定)、これも物やサービスの関税を相互に撤廃していこうとする取り決めですが、この協定を例にして推進を主張します。「韓国は昨年、ヨーロッパ共同体(EU)とFTAを結んだ。すると韓国内でオレンジジュースを製造していたコカコーラが、オレンジの輸入をこれまでの米国フロリダ産から、関税がゼロになったスペイン産にした。その結果、フロリダのオレンジ産業が打撃を受けた。同じように米韓の間でFTAが成立すれば、米国向けの韓国製家電や自動車の関税がゼロとなり、米国で日本の製品がますます売れなくなるだろう。物やサービスを世界に売って豊かになった日本には、自由貿易の先頭に立つことしか(つまりTPP締結しか)繁栄の道が無いことを知るべきだ。

 

 確かに雇用という側面から考えれば、これ以上国内産業が空洞化することは避けなければなりませんが、しかし心配な事態も起きています。米国とメキシコはFTAを結びました。米国は農家に対し、実質的な輸出補助金と考えられる所得補填をして安い価格で農産物を輸出しています。FTAの結果、メキシコは主食であるトウモロコシ生産農家が潰れても、米国から安く買えばいいと考えていました。その後米国は自国農家への財政負担が苦しくなったために、バイオ燃料の推進を理由にしてトウモロコシの市場価格を吊り上げ、価格が暴騰した結果、メキシコは輸入も困難な事態に追い込まれたのです。これはつい三年前の出来事でした。

 

 字数に限りがあるので食糧についてだけ書きますが、米国をはじめとするほとんどの農産物輸出国は、国家戦略として「攻撃的でしたたかな農業保護政策」を行っています。それは食糧が、軍事、エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱の一つであり、「戦略物資」と考えているからです。実際、米国のウィスコンシン大学では「農産物は政治上の武器であり、世界をコントロールする道具になる」と教えていました。また、以前にも書きましたがブッシュ前大統領は「食糧自給は国家安全保障の問題であり、食糧を自給できない国、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」と発言しています。そういった考え方が教育などを通して国民に浸透しているからでしょうか、確かに欧米諸国では、国民の多くが「食糧確保の重要性」や「農業の必要性」を理解し、国の手厚い農業保護政策を支持しているのです。スイスの子どもは、安い外国産の卵ではなく、一個八十円の国産卵を当然のように買っています。これも食糧が国家存立に関わる「戦略物資」であるとの認識が、教育を含めて全ての国民に共有されているからだと思います。

 

 日本の産業構造を考えれば、自由貿易を否定することは出来ません。しかし、そのことによって国家存立の基盤が危なくなるのであれば話は別です。

 TPPという問題が提起されたこの機会に、農業者と消費者が、同じ国民として「農業・農村は、豊かな国家を建設するために絶対に必要なもの」という認識でつながり、具体的な施策を確立した上で、TPPの議論に入るべきでしょう。「国内対策を早急に詰める」という政府の対策の中身はまだ分かりませんが、僅か一年という時間では不可能です。町議会は全会一致でTPP反対を決議しましたが、現時点においては、私も反対を表明したいと思います。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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