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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第百十四想】
2012.05.01

春に想う

 昨年は満足に眺められなかった桜を、今年は少しだけ落ち着いて眺めることができました。今日(四月十八日)、元気あっぷむらは春爛漫、桜は満開。開業当時幼木だった桜も青年に育ち、あと十年後には間違いなく桜の新名所になるなと確信しました。前町長の故岡田幸雄さんが思い描き、種をまいてくださった夢が着実に現実となってきています。故岡田町長の肉体は滅びましたが、その思いは現実の姿として生き続け、私たちに恩恵をもたらしてくれています。

 人間はほんとうに何も持たずにひとりで死んでいくものですが、人に与えたものだけは残ります。どんなに富を築いてもあの世には持っていけませんが、自分が育てた人や創った文化やいろいろなものは残っていきます。「死んでもなくならないもの、それは与えたもの。ならば人に与えていく人生にしよう」そんな思いを、故岡田町長の残してくださった桜の木々が教えてくれています。

 

 梅がほころび桜の蕾が膨らむ季節になると、私には必ず思い出される手紙があります。町が開設している不登校児童生徒対象のフリースペース「ひよこの家」に通級していた生徒の保護者の方からの 手紙です。

 

『三月に入り高根沢町のあの道この道どの道を走っても、あふれる思い出で胸がいっぱいになりました。ひよこの家に通い始めて二年と十ヶ月間、大変お世話になりました。高根沢で過ごしたどの時間も大切に抱いて、この道のりの先に立っていようと思います。「どこで学ぶかではなく、なにを学ぶか」子どもも親も、じっくりと確実に一番大事なことを学んだと、今は笑顔で言えます。ひよこの家は私たちにとって、とても大切なスペースでした。「今はこんなに近く感じられて嬉しい」とは、娘が書いてくれた両親への手紙の言葉です。高根沢町、本当にありがとうございました。関わってくださった全ての方々のお陰です。こんなに自 信に満ちた顔で娘がこの町を巣立っていくことができ、心から感謝しております。』(平成二十一年三月二十三日付)

 

『いじめによって不登校となり、背を丸くし笑顔を失っていた娘は、今では背筋をピンと伸ばし笑顔で元気にしています。 先日、ひよこの家で終業式がありました。 娘はチカラをもらったひよこの家をこの日で最後とし、四月からは中学校へ行くと考えています。毎回帰りの車中でひよこの家であった出来事を楽しく嬉しそう に話してくれます。この終業の日、いつもとは違った格好をした学生服の男子生徒がひよこの家にいました。中学校の終業式に出席してからひよこの家に来たそうです。その生徒も四月から学校へ行くと決意したとの事。指導員の方がその子に「疲れたらいつでも遊びに来ていいからね」と声を掛けたそうです。その子は 「いや僕はもう来ない。僕にはやりたいことがある。だからもう来ないよ」私は涙がこぼれるのを抑えきれずに車を止め、 娘には花粉症だからとごまかしながら泣 きました。大人が考えている以上に悩ん でいる子供達にとって、ひよこの家は一 筋の光を、水分を与えてくれる場所なの でしょう。後は子供達自身が芽を出し、 茎を伸ばし葉をつけ、綺麗に花を咲かせ ることでしょう。桜咲く四月、娘もその 子も、もしかしたらまたブレーキが掛か ってしまうことがあるかもしれません。 そんな時は私たち大人が、また動くこと ができるように温かく見守っていこうと 思います。』 (平成二十二年三月二十九日付)

 

 中学校に戻ったこのお嬢さんは『おぉ、そうか』という詩を書き、それがある月刊誌に掲載されました。

 

 幸せとはなんだ 心から笑えることがあることだ

 おぉ、そうか

 不幸とはなんだ 幸せにたどりつく前の 水たまりだ

 おぉ、そうか

 愛とはなんだ 立ち止まってみれば みえてくるものだ

 おぉ、そうか

 生きるとはなんだ 生きることの意味を 探すことだ

 僕はいま、探している

 

 「ひよこの家」に対する評価は賛否両 論です。「ひよこの家は逃げ道だ」「こんなものがあるから学校に戻らないのだ」 「甘えにしかならない」。そうでしょうか?学校復帰を強制することが決してよい結果を生まず、本人を、家族を、そして先生をどれだけ苦しめてきたことか。

 「どこで学ぶかより何を学ぶかが大切。人生は長距離走、本物の長距離ランナーは序盤中盤はたいしたことがなさそうでも、最終段階ほど見事である。その人の凄みは最後に見えてくるのだ」これは私の持論ですが、ひよこの家の子どもたちはまさにそれを実証してくれていると思えてならないのです。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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