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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第二十五想】
2001.06.01

 日本の総理大臣を選ぶことと同じ意味を持った自民党総裁選のなかで、ひとつの焦点となったのは経済政策の違いであった。つまりそれは、借金をしてでも経済成長をはかる立場と、経済成長を犠牲にしてでも借金を減らすことを優先する立場であった。

 

 私はここでどちらが正しいかを議論するつもりはない。ただ、「経済成長」ということについて少し考えてみたいのである。

 

 経済成長をはかる尺度にはGDPが用いられる。Gはグロス(総計)、Dはドメステイック(国内の)、Pはプロダクト(生産)、つまり国内総生産と呼ばれている。しかしこの国内総生産の計算式には面白いカラクリがあるように思えてならない。

 

 以前、次のような話を新聞で読んだ記憶がある。たいへん示唆に富んだ話なので記したい。

 

 ある国の役人が「我々よりももっと貧しい国がある。それはブータンだ」と言ったという。ところがブータン在住の日本人は「この国はアジアでもっとも豊かな国ではないか」と感じるという。ブータンには建坪二百平方㍍ほどの立派な三階建ての農家が並ぶ。豪族の家ではなく普通の農家だ。土地のない農民はほとんどいないし、貧富の差も比較的少ない。それでも「最貧国」扱いを受けるのはGDPの数値のいたずらだという。ブータンではまだ物々交換やお互いのサービスの交換が盛んだが、これはGDPの数字に表れない。多くの人が先祖伝来の家に住む。つまり不動産の売買が少ないから加算されない。人々はとても山菜を好み、森を大切にすると同時に森の恵みを最大限に享受している。これらもGDPの数字には表れないのである。

 

 都市化が進みゴミが増え、ゴミ処理の費用がかさめばGDPも増える。小川のメダカやホタルなど多種多様の生物はGDPの数字に表れないが、小川の生態系を破壊してコンクリートで固めることはGDPを押し上げることになる。

 

 統計上の「最貧国」といわれたブータンの人たちが、日本の満員電車や破壊された景観の跡を見たらなんと感じるだろうか。

 

 私たちはそろそろ、「GDP」に代わる物指しを用意すべき時を迎えているように思えてならない。例えばGHP(Hはハピネス幸福)、うまい日本語が出てこないが「幸福総生産」などと勝手に思いをめぐらしているのである。

 

 余談だがブータンの若き国王は昭和天皇大葬の時に来日した。辰濃和男氏の文章「青いケシの国に眠る男」によれば「この機会に経済援助の交渉をと望む各国首脳の多いなかで、国王はむしろその機会を退け、外務省幹部を驚かせた」そうである。そして国王は腹心に言ったという。「悲しみの席に来たのに援助のことなんて持ち出すべきではない」と。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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