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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第七十四想】
2006.05.01

足尾植樹デー

 四月二十三日の日曜日、恒例の足尾植樹デーに行ってきました。今年で十一回目となるそうですが、私は五回目の参加になりました。作業道を歩き、急斜面に作られた階段を六百段登ったところが今年の植樹場所でした。一緒に行った私より若い仲間二人は日頃の不摂生のためか三百段目でダウン。その場所での作業となりましたが、私は何とか登りきることが出来ました。この日は私たちのほかに「高根沢町炭焼き愛好会」の皆さんも参加されました。今年で三年連続になると思います。毎年驚くのですが、今年も私たちよりずっと年上の皆さんが見事に六百段を登りきりました。戦後の混乱期に辛酸を舐め、今日の日本を創り上げた先輩方は、肉体的にも精神的にも鍛え方が違うんだなあと唯ただ感服するだけでした。

 

 石が混じる痩せた急斜面にスコップで穴を掘り、細かく砕いた炭を土によく混ぜて苗木を植えます。苗木が強風に飛ばされないように上から強く土を押さえて作業は終わります。どうして炭を混ぜるのか。銅の精錬所から出る亜硫酸ガスによって草木が枯れた山々の土は酸性化が著しく、それを中和するためにアルカリ性の炭を混ぜるのです。また炭の表面に開いたミクロの孔は、苗木が根から養分を吸収できるように土中の養分を分解してくれるバクテリアの格好の住家にもなるのです。昨年から、主催者側で植樹場所の所々に炭を用意してくれるようになりましたが、それ以前に炭の効用を知っていた私たちは、炭焼き愛好会の皆さんが焼いてくれた炭を背負って足尾に登っていました。まさか炭焼き愛好会の皆さんの炭を背負う姿を見て主催者側がハッと気が付いた訳ではないのでしょうが、用意された炭を見て嬉しい限りでもありました。私たちが豊かさを手に入れた代わりに足尾の山々は「はげ山」となりました。「足尾に緑を育てる会」の話では、植樹目標は百万本で、現在までに約三万本ですから年間一万本を植えたとしてもあと約百年はかかるということでした。これからも膨大な時間と人手をかけなければなりませんが、人間が招いてしまった「負」を埋めていく作業に参加し続けたいと思っています。

 

 

下ごしらえの秘密

 食生活問題研究家の増尾清さんの文章から。

 

 日常の料理で、手間のかかる「下ごしらえ」はなじみの薄いものになってきました。でもこの「下ごしらえ」の中に健康を守る秘密があると増尾さんは言っています。サラダなどを作るとき、キュウリに塩をふって、まな板の上で転がして(板ずり)から使う。こうすると食感が高まるだけでなく、野菜の表皮のすぐ下に残る農薬などを減らすことが出来るのです。脂肪の多い魚の場合には、熱湯をかけたり湯に通したりする(霜降り)ことで、脂肪に溶け込んでいるダイオキシンなどの減量に効果があります。合わせ酢、割り醤油につけると、食品に含まれている添加物などを引き出す力がより強くなります。アク取りや酢洗い、湯引きと呼ばれる調理法も同様の効果が確認できたということです。

 

 三十から四十年前、食品には現在使用が禁止されている防腐剤や殺菌剤が入っていました。農薬の成分も同じでしょう。にもかかわらず健康被害が顕在化しなかったばかりか平均寿命を延ばしてきたのは、当時の食生活の中に、有害物質を減らす調理法があったからであり、だとすれば除毒・解毒原理を持った調理法が失われつつある現代の食生活の中で育つ子ども達の健康が心配であると、増尾さんは結んでいます。

 

 「下ごしらえ」の中に詰まっている「おばあちゃんの知恵」は、決して声高に叫んだりはしないけれど、いつもひっそりと生活の中に寄り添い、健康を守るという大きな仕事をしてきてくれたようです。

 

 やっぱり「手間、暇 かけて」の奥には、目には見えないけれども大切なことがたくさんあるということなのでしょう。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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