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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

新年のごあいさつ
2006.01.01

 「柿の実の、届く限りは旅人へ。

 てっぺんは鳥のため、

 真ん中どころは、家族で食べよう。」

 

 東京都を流れる多摩川流域の立川あたりには、昔から柿の木が多く、こんな言葉が伝えられているといいます。

 

 秋、柿がたわわに実る。

 

 「旅のお人よ、さぞかし喉が乾いたことでしょう。手の届くところの柿は、どうぞ貴方がお食べなさい。一番高いところの柿は、鳥達よ、君たちの分け前です。そして、きゃたつ脚立やはしご梯子がなければ手の届かない真ん中あたりの柿は、私たち地元の人間がいただきましょう。」ざっとこんな意味でしょうか。

 

 見知らぬものに対して心を開いている多摩川流域の人たちの暖かさ、品性がこの言葉には込められている気がします。そして、日本という国の風土の中には、こんなにも美しい地下水脈が途切れることなく流れているのだと思い知らされます。

 

 日本漢字能力検定協会が毎年公募し発表している平成十七年の世相を代表する漢字は、「愛」でした。

 

 紀宮様と黒田さんのご成婚、ドラマ「電車男」に代表される純愛ブーム、「愛・地球博」の大成功、福原愛、宮里藍といった各界のアイちゃんの大活躍などが「愛」という漢字を選んだ理由だそうです。でも逆の理由もありました。それは、私たちが生活する今の世の中に、あまりにも「愛」が少なくなってしまったから選んだという意見もたくさんあったというのです。

 

 昨年の秋、町文化祭の書道会場で、墨痕鮮やかに迫るある言葉に、私は思わず立ち止まり、手帳にその言葉を書き留めました。

 

 「この根 土中にがんばる 故に かの美しく花は咲く也」

 

 ああ、何という美しい言葉でしょう。生きて在ることの嬉しさや感謝をこんなにも素直に言い表した言葉はありません。何気ない日常の中に「愛」はしっかりと息づいていることを知らされたのでした。

 

 志高き町民の皆様とともに、高根沢町は美しくありたいと思います。日本という国の風土が育んだ美しい地下水脈が流れ続ける町でありたいと思っています。

 

 「明日、地球が滅びるとしても、私は今日も樹を植え続ける」

 

 本年もよろしくお願い申し上げます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載はご遠慮下さい。
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