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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第七十想】
2005.12.01

手間 暇 かけて

 全国の市町村は十年に一度、向こう十年間の町づくりの計画を作ります。行政の世界ではこれを長期振興計画と呼んでいます。町長になって初めて知ったのですが、全国の市町村はこの振興計画なるものを策定しなければならないと地方自治法で義務付けられていました。もちろん法律上の義務があろうと無かろうと、町政運営の基本方針を示すことは当然の義務でもあると思います。

 

 今年は十年前に岡田幸雄前町長が策定された高根沢町第四次長期振興計画の最終年度に当たります。したがって現在、次の十年間の計画を策定している最中です。まだ素案の段階ですが、この素案をもとに、十一月一日から順次、各小学校区ごとに説明懇談会を開催しました。また「まち普請志民の会」の皆さんにも説明させていただきました。説明懇談会の場や電話・文書にてたくさんの意見・提言もいただきました。今後の進め方としては、説明懇談会の意見・提言を集約検討し、町議会に報告。来年一月には素案の次の段階である原案を作成し、印刷の後に新聞折り込みにて町内世帯に配布・インターネットや図書館等の公的施設での公開、そして一ヶ月の期間を設けてパブリックコメントの聴取。これらの作業を経て成案を三月議会に上程していきたいと考えています。

 

 今回の計画はこれまでの「振興計画」という文言ではなく、「地域経営計画」と名づけました。なぜ「地域経営」という言葉なのか。これには次のような理由があります。右肩上がりの時代の終焉、地方分権による構造改革、少子高齢社会、行政ニーズの多様化によって、限られた資源を適切に管理し計画的かつ効果的に運用することや、地域課題を的確に捉え優先順位を議論し効率よく資源を配分することが行政に求められているからなのです。そして素案の作成に当たっては次の三つのことを大前提と致しました。その一、今年の二月に行った住民意識調査の結果。その二、将来の人口推計。その三、十年間の財政予測。つまり町民皆さんの思い描くこの町の将来の姿を、人口の推移や財政の裏打ちと付き合せながら実現可能な計画としたものなのです。「あれも、これも」から「あれか、これかへ」。その意味で「経営計画」という名前となったわけなのです。

 

 今私たちは、大きな時代の転換点に立っています。右肩上がりの高度成長期が終わりを告げ、日本という国の財政的余力も底が見え始めました。最近読んだ「幸福の政治経済学」という書物の中に、大変示唆に富む文章を見つけました。それは、スイス国民の幸福感は、所得などの経済的要素とは必ずしも強く結びついているのではなく、州ごとに異なる直接民主制の充実程度によって差が生じているというものでした。確か、日本でも、かつての高度成長期において、国民一人当たりのGDPの急激な増加が、少しも国民の幸福感に反映されなかったという調査結果が出されています。もちろん、その日の暮らしにも困るような貧しさがあっては幸福感を感じることはありませんが、だからといって有り余る物の豊かさが決して人を幸福にするものではないということを、21世紀の私たちは知ったのだと思います。

 

 21世紀は、環境の世紀であるとともに、心の世紀であり、人間というものが本当の平和を実現できるか否かを証明する世紀であると、私は考えています。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄社会の中で、私たちはともすれば「手間なし・手間要らず」に価値を見出して、ひたすらに簡単・便利・利益といったことを追い求めてきました。それらをすべて否定するつもりはありませんが、そのことによって、地球の温暖化による気候変動がもたらす農作物への影響や、「狂牛病騒動」、さらには最近の「アスベスト問題」など、私たちの生存の足元を脅かす事態を招いたとすれば、考え方を変えていかなければならないと思います。そのような考察から、「地域経営計画」の合言葉を『“手間 暇 かけて”~行政改革から行政創造へ』とも致しました。

 

 ご理解の上、積極的なご意見・ご提言をお願い申し上げます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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