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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第九十四想】
2010.03.01

氷がとけたら

 二月二十日の朝日新聞天声人語はこんな書き出しでした。『氷がとけたら何になる?テストである子が「水になる」ではなく「春になる」と答えたという話を、先ごろの小欄で書いた。・・・』この文章を読んで、まだ私が県議会議員だった十二年前の県議会一般質問を思い出しました。こんな趣旨だったと思います。

 

 「教育長、氷がとけたら何になりますか?」

 

 唐突な質問に県の教育長は戸惑っている様子でした。

 

 「教育長、理科の正しい答えは水になるです。でも、厳しい冬を耐え忍んでいる北国の子どもたちは、もしかすると春になると答えるかもしれません。農作業のできない冬の時期、一家の大黒柱である父ちゃんは家計を支えるために出稼ぎに行っている。その時期、残された家族は肩を寄せ合って助け合いながら春を心待つ。貧しい夕餉(ゆうげ)でも、ここに父ちゃんが居たらどんなに楽しいだろう。父ちゃんの膝はがっしりと逞(たくま)しくて、そこに座るだけで安心だ。そんな思いを抱きながら、いよいよ雪がとけ、氷がとけ、父ちゃんが帰ってくる春になる。そんな子どもたちが、氷がとけたら(父ちゃんが帰ってくる)春になる、と答えたとしたら、それは誤りですか?私はそうは思いません。一人ひとりの子どもにはそれぞれに背負っている生活があり、ドラマがあります。個性を伸ばす教育というのならば、子どもたちが紡いでいるドラマを大切にして欲しい。そして、ドラマを大切にするのならば、答えは水になるだけではないはずです。リンゴにはリンゴの花が咲き、ミカンにはミカンの花が咲くんです。どちらが上とか下とかありません。命の限り懸命に咲く花はみんな美しい。ぜひ、そのような考え方で懐の深い栃木の教育を創っていっていただきたい。」

 

 当時、四十歳になったばかりの若造でしたが、この質問の思いは今でも変わりません。人が互いに違いを理解し、それぞれの良いところを認め合う。遠き日の熱情をあらためて確認させてくれた天声人語でした。

 

 

なつおとめ

 イチゴ王国栃木の課題は夏秋イチゴです。「とちおとめ」生産の端境期となる七月から十一月、現在は夏秋イチゴとして「とちひとみ」を生産していますが、この「とちひとみ」、生産適地は標高五百メートル以上なので県内でも地域が限定されていました。しかも、色、形、食味、病気に対する抵抗力に問題があり、収量も一反当り二トンでした。これらの問題を解決すべく、県のイチゴ専門研究機関「いちご研究所」が開発した新品種「栃木25号」の名称が「なつおとめ」として発表されました。この「なつおとめ」、生産適地が標高二百メートル以上、収量は一反当り三トン、そして色、形、食味、さらに病気への抵抗力も改善されました。県の経営技術課は「今後、『なつおとめ』と『とちおとめ』の”ダブルおとめ“で、一年を通じて栃木ブランドのイチゴを消費者に提供したい」と言っています。これまでイチゴ王国栃木の主生産地は県南地域というイメージでしたが、これからは私たちの住む塩谷地域が主役になる時が来ました。県南の「とちおとめ」に勝るとも劣らない生産技術を持ち、しかも県南地域にはない「なつおとめ」の生産適地を持つJAしおのや管内なれば、一年を通じて栃木ブランドイチゴを提供できるのです。主役なればこそ価格形成力を持つことができます。栃木県当局に深く感謝すると共に、産業振興政策における県と市町村の連携と役割分担のモデルケースを学んだ思いがしました。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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