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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第六十八想】
2005.09.01

浄財

 「このお金を地域の道路整備に役立ててください。」

 

 役場を訪れた青年の突然の申し出に、助役はびっくりしたという。長身痩躯、端正な顔立ちをした三十代前半の青年からの寄付の申し入れだった。金額は二百五十万円。決して少ない金額ではない。一般企業に勤務する彼にとっても、コツコツと蓄えた大切なお金に違いない。

 

 青年の話を聞き、役場でも調べたところ、彼の住む地域にはまだ未整備の道路が残っていた。彼の思いとしては、できることならばその道路の整備のためにこのお金を役立てて欲しい、ということだろう。いつまでたっても整備されない自分が住む地域の道路を見ていて、いろいろ考えた末の事だったろうと思う。

 

 彼の思いを受けとめてすぐにでもその道路を整備したい。偽らざる私の気持ちである。しかし残念ながらすぐにはそうすることが出来ない。これまでも町民の皆さんに説明してきたように、高根沢町の道路整備には「道路評価システム」という大原則がある。道路整備をする順番を決めるための町独自で作ったモノサシがあるのである。一つひとつの路線について四十五の側面から点数をつけ、その総合点数によって優先順位が決まるという仕組みになっている。町長の恣意的な考えによって勝手に道路を整備できないということでもある。選挙で選ばれる町長としてはとても残念なのだが、これが正しい姿であると思っている。

 

 青年にはその仕組みについて職員から説明をした。「道路評価システムという大原則に基いて道路整備を進めていますので、このご寄付をいただいたからといってすぐに整備できるという保証はどこにもありません。お気持ちを考えるととても心苦しい説明になってしまうのですがどうかご理解をいただきたいと思います。」

 

 「その考え方で結構ですから、このお金を役立ててください。」町職員の説明に青年は納得してくださったとのことだった。私としては、今回の寄付について道路評価システムの中にある「財源」という側面から点数を加え、その結果総合点数が優先順位のどこまで上がるかによって整備できる時期を決定していくことになると考えている。

 

 

町づくりの憲法

 町では今、町民と行政の新しい関係を作り上げたいという考えから、町づくりの憲法といわれている「町づくり基本条例(自治基本条例)」制定の準備をはじめています。町民の行政に対する意思表示のルール、行政側の町民の意思表示に対するルールをはじめ、この町に住む人々が自らの町を自ら創っていくために良かれと思う事柄をきちんと制度として確立したいと思うからです。町の憲法を作るのですから時間はかかるかもしれませんが、町議会やいろいろな団体、そして公募による町づくり組織である「まち普請志民の会」の皆さんをはじめ多くの方々と議論を積み重ねていくことが大切だと考えています。

 

 そしてこれらの仕組みが出来上がった時には、もう町長など存在しなくとも、高根沢町自体が生命体であるかのように町民の手によって自律的に経営されてゆく。これが私の究極の目標であり、夢でもあるのです。

 

またまた未熟な国語力を披露してしまいました。先月号の文章中、「貧しい暮らしにあっても・・・庶民の優しさ暖かさ・・・」の「暖かさ」は「温かさ」が正しい漢字の使い方でした。町民の方からの温かい指摘をいただきました。心から感謝申し上げます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載はご遠慮下さい。
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