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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

新年のごあいさつ
2004.01.01

「ハルウララ」

 二〇〇三年の話題を最後に締めくくったのは、高知競馬の牝馬ハルウララでした。デビュー以来の九十九連敗が「負け組の星」と話題を呼び、十二月十四日の百戦目のレースでは断トツの一番人気。レース自体の売上げも普段の倍以上になりました。

 

 結果は十頭中九着でついに百連敗となりましたが、「負けても負けても頑張る姿が多くの人に感動を与えた」と橋本大二郎高知県知事から表彰も受けました。

 

 テーマソングのCD発売やTシャツなどのグッズはもちろん、ハルウララの単勝馬券は「当たらない」意味をかけて交通安全の御守りにもなっているそうです。

 

 「無事これ名馬」という言葉は確かにありますが、「悲劇のヒロイン」ではなく「勝てないヒロイン」ハルウララにこれほど多くの人々が思いを寄せる姿を見たときに、私の脳裏に老子の言葉が浮かびました。「愛すること。あまり欲張らないこと。そして、人の先に立とうとしないで自分のペースで生きること。」老子はこれを「三つの宝」と言っています。

 

 経済の成長が当然という考え方の中で人々は「勝つこと」を義務付けられてきました。経済成長によるパイの拡大はそのことを十分に可能にしたからです。しかし今や経済成長は不可能となり、その中で「勝つこと」の義務感だけが重くのしかかっています。そんな中で人々は「勝つことも、負けることも、興味はないよ」と言っているかのようなハルウララの悠然とした姿に自分を写し出しているのかもしれません。

 

 新年を迎えました。現実に目をやれば、私の立場では老子の「三つの宝」を実践するというわけにはいきません。しかし、社会構造が変わり、それに少し遅れて人々の意識が変わっていくとするならば、私のような立場の者にはその変化をいち早く察知して施策を展開する責務があります。本年もその一番大切な基本を忘れずに町政全般に取り組んでまいります。

 

 ハルウララは引退後、栃木県黒磯市寺子の乗馬クラブ「那須トレーニングファーム」で馬術馬として再出発する予定だそうです。彼女が余生を送るにふさわしいふるさと栃木でありたいと思います。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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