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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

新年のごあいさつ
2010.01.01

 春夏秋冬と季節が巡り、身体と心を引き締める寒さの中で、新年を迎えることのできる日本に生まれたことを、ありがたく思います。新年という、もっとも大きな節目は、落ち着いた心と静かな目で、「いのち」を見つめる機会を与えてくれます。

 

 私たちがここにいるのは、それは私たちの父と母が、私たちを生んでくれたからです。その父と母も、さらにその両親の存在があって、この世に生を受けました。ずっと先人たちが「いのち」をつないできて、私たちはこの時代に生きています。

 

 考えてみると、「いのち」は駅伝の襷(たすき)のようなものかもしれません。前の人達が襷をつないでくれたから、いま、走っていることができます。そうならば、私たちは、前の時代を生きた人々から受け継いだ襷を、必ず次のランナーにつながなければなりません。駅伝と一緒で、リタイアしたら、それまで走ってくれた人達の努力は全部無になります。これから走ろうとする人達の夢も消えてしまうのです。駅伝の選手たちは、日々の苦しい練習に耐え、競技会では必死の思いで力を出し尽くし、倒れこむように中継所に駆け込んできます。そして祈るような思いで、次の走者に自分が身に付けてきた襷を託します。その全力を尽くす姿に、見ている我々は胸打たれるのです。

 

 昨年はキリンビール栃木工場の閉鎖通告という激震が走りました。そのショックは言葉に表すことができないくらい大きなものでしたが、それと同時に、三十年前、キリンビール栃木工場誘致に取り組み、幾多の困難を乗り越えられた先人たちのたいへんなご苦労にも気付かされました。先人は先を見通せぬ上り坂を「みごと」に走りきって、襷を渡してくれました。「前人木を植え、後人涼を楽しむ」という言葉のように、これまでの高根沢町は、先人のお陰で、比較的平坦な道を走ってくることができましたが、これからはそうはいきません。しかし、どんな悪路であっても、たとえ身体に激痛が走り、意識が薄れ倒れこもうとも、必ずや次に襷を渡さなければならないのです。

 

 目の前にある困難を誰かのせいにするのではなく、感謝の心から始めたい。恨みや悪口からは何も生まれませんが、感謝の心は明日とつながります。三十年間、わが町に計り知れない恩恵と誇りを与えてくれたキリンビール栃木工場に対する感謝の心こそが、この困難を乗り越え走りきるための力となるのであり、先人への尊敬にもつながるのだと思います。

 

 そして、スピードが速くなくても、走る姿が美しくなくても、全てに感謝しながら走りきることこそが、襷をつないでくださった先人の「みごと」な走りに少しでも近づく道だとも思っています。

 

 本年もよろしく御願い申し上げます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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