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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

新年のごあいさつ
2009.01.01

「いのちの世界」

 今、私たちが直面する世界的な金融危機、そして百年に一度と言われる経済的混乱は、「お金」の本質を私たちに示してくれました。本来お金とは、物が流通するための便利な手段に過ぎませんでした。そして、きちんと働いて誰かに喜んでいただいたご褒美としていただくものでした。しかしお金そのものが目的となり、お金がお金を生む世界では、お金を動かすことだけで莫大な利益が転がり込みます。世界経済を席巻した金融工学は、お金がお金を生む実態のない世界でした。その結果、金融経済は実物経済の三・六倍の規模にまで膨らみました。現在の金融危機は、本物の技術や誰かに喜んでもらうという、志や感謝を伴った「いのちの世界」を軽んじ、「お金の世界」だけを追い求めてきたことに天罰が下ったとしか思えないのです。私たちは「お金の世界」が豊かになれば「いのちの世界」も豊かになると信じてきましたが、どうもそうではないらしいと気がつきました。もちろん「お金の世界」は大切ですが、それ以上に「いのちの世界」を充実させなければ「お金の世界」が暴走してしまうことを知ったのです。

 

 「いのちの世界」を大切にしたい。そんな思いから、今年十月、デマンドバスの実験運行が始まります。交通の不便な地域の人や高齢者などの移動手段を持たない方々が、行きたい場所へ気軽に低負担で出かけられる町内公共交通の実験です。定時運行ではないので、利用をする方から連絡をいただき、ご自宅まで迎えに行きます。但し、タクシーではないので他の乗りたい方から連絡が入ればその方を乗せてからになります。行き先までの道程も直行とは限りません。他の乗客の方の行き先が目的地より近ければそちらが先になります。ですから時間には多少の余裕を持っていただかなければなりません。行き先からご自宅に帰るのも同じことになります。料金は乗車一回百円を予定しています。通院や買い物、イベントや会議・講座参加への利用はもとより、防犯・防災パトロールなどの役割もありますが、たとえ莫大な費用対効果は見込めなくても、町内をきめ細かに、安価で乗れる小さなバスがのんびりと走っている。そこには子どもからお年寄りまで様々な人が思い思いに乗り合わせている、お互い様おかげ様を感じながら…。利便性を求めながらも、実はそれ以上に大切な絆とか思いやりを取り戻したいのです。バスの中で高齢者が転ぶ事故が増えているという新聞記事がありました。お年寄りはどうしても動作が遅くなり、迷惑をかけるのを気にしてバスが止まる前に席を立ち、結果、転ぶ例が多いとのことです。「お金の世界」中心で生きてきた私たちは、もたつくことを責める空気を心の中に持っています。年齢を重ねればもたつくのは当たり前。「お年寄りには堂々ともたつく権利がある」との空気を、このデマンドバスが全町くまなく運んでくれることも願っています。

 

 本年もよろしく御願い申し上げます。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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