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高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

鳥獣保護法改正への議論に向けて
2014.05.20

私の地元である栃木県日光市、世界遺産である日光二社一寺の敷地内にあったカタクリの群落は、鹿の食害で無くなりました。日光を代表するシラネアオイも同じ状況です。

日光国立公園内には一部、鹿防止柵が設置されていますが、防止策の外側では、本来、地面を覆い尽くしているはずの笹が食べ尽くされており、笹を食べ尽くされた斜面では、少しの降雨で土砂が流れ出し、ヒメマスの生息する渓流は濁り、中禅寺湖にも土砂が流れ込むという状況にあります。それだけではなく、笹が食べ尽くされた地域では、ウグイスなどの小鳥の声も聞こえなくなったと、環境委員会の視察時に、地元の方は話されていました。

平家落人の里と言われる日光市栗山地区においては、ここは独居老人や高齢者夫婦だけの世帯が多い地域ですが、家の周りは猿の楽園です。家を尋ねると庭に猿がいる、裏庭にも猿が遊んでいる。お年寄りはというと、猿を追い払うこともできずに家の中にいる、という状況にあります。

 

しかし、これら鳥獣たちに罪はありません。罪の意識もありません。

かつて日本では、人の住む集落があり、里山があり、奥山がありました。

一神教の人々にとっては、山は悪魔や魔女の暮らす暗黒の世界であり、それゆえに征服されるべき魔の山でした。しかし、多神教の世界に生きる我々にとっては、山々は神々の住まう所であるとともに、死後に帰る神聖な場所でした。人々は里山の恵みを利用することによって同時に里山を守り、その里山は獣と人間の緩衝地帯でもありました。もちろん人間と獣の衝突はありましたが、その衝突自体を吸収する力が集落にはあり、共存を図ってきたのだと思います。人が立ち入るのは里山まで。奥山にはいるのは山の神々に儀礼を尽くす時だけというルールがあったのでした。

例えばイギリスは日本と同じ島国ですが、産業革命の時代に森林をほとんど伐採してしまいました。その結果、日本には188種の哺乳類が生息していて41種が固有の種類ですが、イギリスには50種の哺乳類しかおらず、固有種はゼロです。植物も、日本には5500種以上が生育し、イギリスの1600種を凌駕しています。

 

そのようなことを念頭に置きながら、生態系のバランスを考えた長期的な保護管理計画と、差し迫った被害を食い止める対策の両方が必要であるとの視点から、今国会で審議されている鳥獣保護法改正の議論をしていきたいと思います。

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